ある日。

夏休みにしたいことがあってそれは天丼を食べることだった。でも、予定をみるとどうにもいけそうにないので、前倒しで行くことにした。私は、真夏のとんでもなく暑いときに天丼が食べたくなって、もう何年も真夏になると天丼を食べている。でも、天丼が好きかと言われればそうでもなく、年に一度くらいしか食べない。暑い時だけだ。きっと天丼には、私を鼓舞するような何か不思議なパワーがあるのだと思う。本当は金子半之助に行きたかったけれども、都内ではコロナが増えているというし、近場で探すことに。行ってみたかったかまくらの天ぷらひろみに決めた。すると、夫も行きたいというので、二人で行くことに。鎌倉のわりにはとても広くて、スッキリと清潔な店内には、地元のお客さんと観光客が半々くらい。ほとんどが年配者だ。オーラをガンガンで感じる大将とその隣でひたむきに上げ続ける細身の男性、そして、きっと夏休み中のアルバイトであろうガリガリで一見チャラそうなでもちゃんと誠実に働く男の子、三世代でやっているであろうその姿がよい。熱中症になりそうなほどの暑さで、扇風機を片手に汗だくでやってきた私たちに出されたのは暑い煎茶。あぁ、やっぱり水は出ないよなぁ。としぶしぶ手に取ると、びっくりするほどのお茶のうまさ。お茶がこんなにおいしいというのは衝撃だ。これはますます天ぷらが楽しみだとワクワクしながら、おてがる丼という穴子、エビ、野菜の天丼を頼む。鎌倉だけに有名な文士が通ったとあり、そのなじみのメニュー目当てで来る人も少なくないようだ。店員にあれこれ聞いている。ちなみに私たちが頼んだおてがる丼は鎌倉価格にしてはかなりリーズナブル。それに付け合わせとみそ汁がつく。出てきたおてがる丼のふたをうきうきしながら開けると、まるで金子半之助のような華やかさはない。それでも、穴子はとても大きく、エビは二本も入っている、そして季節の野菜がごろごろと入って、ゆつをまとった天丼は、黒かった。あぁ、もしかしたらくどいかなぁなんて思ったものの、一口食べ始めたらとまらないうまさだ。全然口説くなんてない。さっぱり、スッキリとしていて、そのお店の雰囲気そのもののような天丼だった。ごはんは少なめに、そして、素材はでかく、ときどき付け合わせを挟みながら食べ進める。驚くべきことにみそ汁と付け合わせでさえも、びっくりするほどのうまさだ。いいお店だった。また来たい。

その帰りに、雲母で白玉クリームあんみつを食べて帰る。私はクリームあんみつが好きなので、ここのあんみつを食べたかった。夏休み真っただ中ということもあり、2時間以上暑い中待たなければならない。私はあと一歩のところで熱中症になり、気持ち悪くなり、もう帰ろうと何度も思った。でも、やっと日陰に入れて、椅子に座れて、死ぬような思いで食べた白玉クリームあんみつはおいしかった。冷たいアイスが体にしみこみ、寒天と黒蜜のさらっとしたのど越し、最高であった。白玉は実はそんなに得意ではないので、夫に3個ほどパスする。私が熱中症で倒れそうになっている横で、夫は水も飲まずに過ごしていたのに、オーダーしたのが、白玉きな粉。夫は白玉に目がないのだ。しかも白玉に山ほどかかったきな粉なんて、水分持っていかれないのだろうかと思っていたら、案の定、途中から具合が悪そうだったので聞いてみたら、「お茶を何度も飲み干してるのに水分持ってかれてきつい。これは夏に頼むのはしんどいな」なんて言いながら食べていておもしろかった。

帰るころには、暗くなりはじめて夜風が気持ちよかった。鎌倉の夏は尋常じゃない暑さと湿度。すぐに熱中症になる私はやっぱり向いてないなと振り返りながら帰った。これも思い出。楽しかった。

5冊だけの本屋

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