ある日。

夫の誕生日前日。私は用があって、一日出かけていた。夫の誕生日は平日だし、当日はサッカーを観に行くというので前祝をした。夫は、モンブランに目がないくせに、メレンゲが入っているのはダメ、ナッツはアレルギー、などいろいろ注文が多い。そのためどこが理想のモンブランなのか?と聞いてみたところ、どうやらコージーコーナーらしいのでコージーコーナーでモンブランを2個買った。それから豚丼が食べたいというので吉野家で豚丼。そして焼き芋。お腹にたまりそうな、のどに詰まりそうなものばかり買って帰った。11月生まれの夫。芋栗カボチャが好きなため、モンブランと焼き芋って、なんだかおもしろい。

ものすごく荷物を抱えて家に向かったら、マンションのすぐ近くで犬とおじさんが立ち尽くしている。夫と愛犬であった。それが愛犬は私を見つけるなりものすごい勢いで走ってきた。みほちゃん、みほちゃんといって、道端でキャンキャン甘えてくる。その様子を見て通りすがる人たちは微笑んでいる。夫が散歩がてら私を迎えに行こうと思ったが愛犬が全く歩かなかったとのこと。

私は一日中出かけていたこともあり、荷物も重くて悩んだけれど、そのまま一緒に散歩にいくことにした。ものすごく美味しいにおいを漂わせながら。愛犬は私をずっと見ながら歩いている。うれしそう。少し短めに散歩して帰る。

夫は豚丼うれしそうに食べる。前に、豚丼を買いたかったのに、ひとり前の人で終わってしまったと言われて落ち込んでいた時の話を思い出す。「豚が、豚丼、超特盛」と夫が言っていた。ものすごい豚みたいなでかい男が、目の前で超特盛とか訳の訳らないサイズを頼んだせいで豚丼がなくなってしまったというのだ。面白かった。今でも笑える。それからケーキを食べる。うれしそう。焼き芋も食べていた。愛犬もイモに目がないので焼き芋をちょっとあげる嬉しそう。


西條奈加の『まるまるの毬』読了。店の主人治兵衛と出戻りの娘、そして孫娘、親子三代で営む麹町の菓子店・南星屋を舞台にした美味しい時代小説。店主の治兵衛が旅先で出会った 江戸ではめったに食べられない珍しい菓子を毎日二、三品売っているこの菓子店、なんと理想の在り方だろうか。私は、よくデパ地下に入っている全国のお菓子を集めた銘菓売り場が好きなのだ。だから、こういうお店って好きだなと思う。「才ある者は、己の才のなさを誰よりもよく知っている。だからこそたゆまず務め、ころんでも立ち上がり、時には這ってでも先へ行こうとする」「己で己の運を切り拓いていく者は、一度や二度の不運になぞ負けはしません」いい本であった。

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