ある日。

久しぶりによく眠れた。というか完全に寝坊した。夫がすでにキッチンでパンを焼いてくれていて、開かない目を辛うじてうっすらと開き、お湯を沸かしココアを入れた。それをテーブルに運ぼうとしたら、盛大に床にココアをこぼした。フリーズ。どうしていいか分からない私に代わって、夫が床を拭いてくれた。さらには「あ!パンが焦げちゃうから火を止めて」と冷静に支持をくれたので、火を止めたが熱すぎて持てないので、夫に頼む。ヨーグルトとはちみつをテーブルに置こうとしたら、手から滑ってはちみつがすごい音を立ててテーブルに落ちた。やることなすこと裏目に出ていた。


洗面台で歯磨きをして出ようとしたらドアにぶつかる。こういうことばかりなので、今日はあきらめて一日勉強の日にする。新しいことを学ぶのは楽しい。実はウキウキしている。こういう発見っていい。脳にいい刺激があるに違いない。


こんなに朝からてんやわんやなのに、お昼にフォーを作ろうとして、すでにゆでた鶏肉を一口サイズに手でさき、そのゆで汁をいろんな調味料を入れて整えた。すでに作っておいた煮卵も入れようと冷蔵庫から取り出す。そこで気づいた、フォーを戻しておかなきゃいけなかった。30℃くらいのぬるま湯で戻すと書いてあったので、お湯を沸かし、そこに水を入れて、さて私的には30℃くらいかと思って左の人差し指の第一関節を勢いよくそこへ入れてみたら、ぬるま湯どころかただの熱湯で、そこだけが真赤になっていた。15分も戻してたら夫がお昼時間に入っちゃうなぁと思っていたら、早々とお昼を求めに夫がやってきた。事情を話して待っていてもらう。そんな私がやっていたのは、もやしのひげ根取りである。なんでこんなちまちまとした作業を今はじめたんだ?と自分に怒りながらも一つ一つ丁寧に行う。もはや動体視力も手際も自分では考えられないほどスムーズだ。おそらくこれはゾーンってやつ。スポーツ選手とかそういうすごい人たちが入るやつ。それが私はもやしのひげ根取り。。(笑)おもしろい。もはや自分でも笑ってしまっている。そこで、必要以上のもやしのひげ根取りを終えてしまった。私がテンパっているときにこういうちまちまとした料理を丁寧に始めるのは、最高の気分転換だけではなく、頭の整理、達成感で自分に勢いをつける、とんでもない集中力を発揮するというものすごい効果があるということがわかった。自分がしたいことをただする。自然の流れに身を任せているといいことってある。そんなことを考えていた。そこで、フォーをもどしたきりゆでていないことに気づき、大急ぎでゆで、小葱を切って終了した。なんかとんでもない大盛のフォーになってしまったけれども、美味しかった。あっさりしていて食べやすいし、なんか体にいい。いつもはもやしをしっかりとゆでるのだけれども、今回はレア。この歯ごたえたまりませんな~と幸せをかみしめる。鶏肉の匂いを察知した愛犬は足元で半狂乱。


そんなポンコツな私なので、仕事がなかなか進まなかった。間違ってしまったりしてはいけないので、気分転換に『月と六ペンス』を読んだり、コーヒーを飲んだりしていたら、夕方になってしまい、また慌てて仕事に戻る。『月と六ペンス』、とんでもない本を読んでしまった。これはこれからの私のための本だ。きっとこれからも私は何かあるたびに読み返すだろうと思った。


夜、トマトのパスタ。トマトを焼いたのはよかったのだが、パスタのゆで時間をきっちり正確にまもる私がタイマーをかけ忘れ、何分やったのかわからなかったので、何を血迷ったのか、またきっちり時間通り9分ゆでてしまい、結果多分20分くらいゆでてしまったパスタはぶよぶよで大盛で、とってもまずかった。「料理の下手な人がゆでたみたいなパスタだ」と、私は言う。パスタもカップ麺も私は正確にタイマーかけているのだ。


一日ポンコツだった。風呂あがり、またしても盛大にドアにぶつかった音を聞いた夫は、「このひと、毎日風呂のドアにぶつかっているな」と大笑いしていた。好きなことに関してはとんでもなく夢中になって取り組むくせに、それ以外の特に生活全般は本当に難しい。私はすぐに生活が苦しくなる。疎かにする。でも生活が基本なんだ。ごはんを食べることも、お風呂に入ることも、他の人が難なくやっていることを私は勇気を振り絞って頑張らないとできないのだ。でもそれをサポートしたり、面白がってくれる夫がいることで私は救われている。

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