ある日。
愛犬が久しぶりにドッグランに行くので、朝から準備に追われる。一年前くらいに、ここに一時預かりをお願いした時には、初めての場所に戸惑いすぎて、愛犬がしばらく元気なかった。でも、愛犬は基本的に他の犬が好きだ。でも、来られると隠れてしまう複雑な性格なため、それを慣れさせたくてそこでやっているデリケートなワンちゃん向けのイベントに参加。私たち夫婦ももちろん初参加なので若干緊張している。夫に至っては犬は飼っているけれども、犬嫌いだ。それで、30匹くらいのデリケートなワンちゃんたちとその飼い主たちが一同にドッグランに集合した。いろんなわんちゃんと飼い主がいておもしろい。ほとんどが小型犬だ。ふりふりのワンピースを着たヨークシャーテリアには50代くらいのおじさんが、気難しいチワワには可愛らしい女性が、なかなかみんなに近寄れないポメラニアンにはものすごい本気のカメラをぶら下げて写真を撮っている女性が、ドッグランの隅っこに逃げてしまうトイプードルには母娘が。そして、うちのかわいいトイプードルは可愛らしいくすみピンクの新調した洋服を着て夫婦が付き添っている。最初に、スタッフの方から説明を受け、どの飼い主をおやつを片手に、いろんなワンちゃんのところにあいさつさせに行こうと苦戦する。我が家、何を隠そう3人そろって人見知りである。10分ほどすると、だいたいグループができ上っているのに、私たちファミリーは浮いている。愛犬にいたっては犬ではなく、若くてかっこいい男性スタッフの足元にばかりあいさつに行っている。心の中で、「メール、わかるよ。私もそのお兄さん好きだよ。でも、今はワンちゃんとあいさつするときだから」とつぶやく。完全に浮いている私たちのところへ、わざわざあいさつに着てくるワンちゃんもいて、それでも愛犬は逃げてしまう。「わかるよ。ぐいぐい来られるのいやなんだよね」と心の中でつぶやく。あちこちにしきりにあいさつに行っているトイプードルがいて、飼い主もものすごく社交的で、このペアはここに参加しなくてもいいのではないか?と思いながらも、なんとなく話していたら、その方が、うちの愛犬が「かわいい!!ベビーフェイス!」とほめちぎってくれる。え!自分の犬が一番可愛いんじゃないの?私たち夫婦は内心で同じことを思った。私もそうだが、夫は、他の犬を見てもかわいいなんて一言も言ったことがない。これは、赤ちゃんとか子供とかに向かってもそうで、その親の目の前では、一応かわいいねとかいうべきではないかと思うのだが、だいたいちっちゃいねとか言っている。しかし、なぜか近寄ってくるわんちゃんたちの飼い主たちが、うちの愛犬をかわいいかわいいと連呼してくれるのだ。言ってもらってるくせに、可愛いとは一言も言えない夫婦。それで、何歳?とか言ってごまかしている。愛犬も、気が合いそうなわんちゃんを見つけて自分から行ったりもできていた。いや、その飼い主が持っているおやつが気に入ったのか?でも、終始、私にべったりだった。それで見かねた夫が、愛犬と二人でとことこと歩き始めると、愛犬は、いつも通り夫をガン無視し、マイペースに歩きそのあとを夫がついていくというスタイルになった。愛犬はうろうろしながらも、かわいいチワワたちが集まる中に行こうとしたら、なんと飼い主がみなさん20代の可愛い女性陣で、愛犬に気づき反応してくれたのだが、そこへ近づくおじさん(夫のこと)よ。完全に若い女子に囲まれたくていったとしか思えないような地獄絵図で面白かった。最後の方は愛犬も一人で私たちを気にするでもなくすたすたと歩き始めたので、なれたかなぁと思っていたら、またスタッフさんのところへ行っていて、おやつをかたづけているところだったのだ。食い意地よ。こうして犬を通してだけれども、まったく知らない人たちとこういう風におしゃべりしたりする機会もなかなかないので楽しかった。一時間、あっという間に過ごした。帰りに、くつろげるカフェスペースで三人で休んでいると、山手に住んでます的なマダムが愛犬を抱っこしている夫に向かって話しかけてきた。何かと思ったら、ものすごく顔がかわいい犬ですねと話しかけられたのだ。遅れてやってきたお嬢様はかわいいティーカップトイプードルを抱えている。いやいや、そちらの方がいかにも可愛くて高そうなわんちゃんですよと思いながらも話をした。
愛犬はあちこちでかわいいかわいいと言われるし、マダム受けのよい夫はマダムに声かけられるし、面白かった。
帰りに中華街でなにか食べて帰ろうと向かうと、8月末までほとんど連休になっていてシャッターがしまっていた。朝、準備に追われてごはんも食べなかった私は、暑いし空腹でキレた。どうにかペットオッケーのおしゃれカフェに腰を遅し、ホットサンドをものすごい勢いで食べる。だいたいこういう時には何に怒っているのか、どう私が思っているのかなんて夫には分からないだろうと思ってモヤモヤするだけなので、夫にイライラしていた原因を食べながらすべて話すと、今度は夫がそのショックで放心状態であった。顔面蒼白で、とにかく水ばかり飲んでいる。この人は私にちょっとでもきつめに言われると病院に行った方がいいんじゃないかというくらい、具合が悪くなる。申し訳ないと思い、私のアイスティーもあげて、お水も二杯くらいもらってきてあげる。私の性格のきつさは親から言われ続けたので認識している。言葉のきつさも自覚している。ああやってしまったと反省する。謝る。とにかく食べなよと促す。甘いものも買ってきてあげようかと聞く。甘いものがこの人には必要だ。でも断られる。そうして、しばらく気まずい雰囲気ですごし、顔色も回復した夫に、好きなパン屋でパンでも買って帰ろうかと散歩しながら向かう。33℃越えの暑さではどうにもならないので、パンを買って早々に帰宅した。
明日からは、朝ごはんはたんまり食べさせよと夫が一言。
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