ある日。

朝、雑穀米をお茶碗によそり、その上に塩入卵とひじきをのせて食べる。あと煎茶。夫はチーズベーコントースト。


夫がサッカーのチケットをもらったので見に行くというので一緒に行く。平塚にあるレモンガススタジアムというところらしい。平塚は初めて降りる駅なので浮かれる。どうやら、キッチンカーなどもでて美味しいものが食べれるらしいとサイトを見て浮かれている。

それでいよいよ平塚の駅に降りたら、びっくりするほど寂しい感じの駅だった。浮かれていた私たちの気持ちはトーンダウン。バスに乗って着いた先では、キッチンカーが行列している。楽しい。夫はいち早く豚丼を買うために並んだ。この人、サッカー見るときいつも豚丼食べてるなとおかしくなってしまう。私はフランスドッグを買った。それで夫が君の好きなドーナツもあるよと教えてくれたので向かうと、マサラダであった。嬉しい。私、初めて食べます。なのでシナモンシュガーを一つ買って半分こすることにした。それらを持ってスタジアムに入ったら、またしてもテンションダダ下がりである。トイレに行ったのだが、和式であった。勘弁してほしい。靴を履いたままなぜかつま先歩きで個室に入り、つま先立ちのまましゃがんで用を済ませた。つらかった。水道にはもちろんハンドソープもないので、念入りに水洗いして、自前のアルコールスプレーをこれでもかというほどかけた。スタジアムが、森の中にあって真っ暗で、そこは私が小学校のときに大会とかが行われる総合体育館のような感じで、まるで時が止まっていた。ここで普通に練習している選手たちがいると思うと心が苦しくなる。何とかしてあげてほしい。スタジアムを囲む、森の奥にそびえたつマンションがとても不気味で私はなぜかそれを写真に撮ってきた。あと、嬉しそうな夫の写真。お弁当を食べていたら、大きな蜘蛛が出現したので、夫が食べ終えたお弁当のパックにその蜘蛛を箸でつまみ閉じこめ、急いでビニールに入れて密閉してすぐさまごみ箱に捨ててきた。その速さたるや私も驚きで、夫なんぞもっと驚いていた。私は虫は殺すまで安心できないたちなのだ。虫嫌いなのかなんなのか分からないが、殺すことはすんなりできるのだ。肝心なサッカーは勝った。夫も嬉しそう。


向田邦子『無名仮名人名簿』、読了。まず初めに「お弁当」これは何度も読んでいるエッセイだけれども面白い。お弁当というのは、本当にその家族の経済事情から習慣までのすべてが表現されていて、なんとなく不快だったことを私も覚えている。あと、「縦の会」という万年筆の話。本妻と呼ぶ一番大切な書きやすい万年筆はうちの外に持ち出さない。二号、三号は旅先や原稿を書くときに持ち出すくらいだそうで、私も愛用の万年筆とすでに販売を終了している愛用のミキモトのボールペンは失くしたくないので、決して家から持ち出さないようにしている。まだ、会社員をしていたころに、出張に出かけた先でミキモトのボールペンを失くしてしまい、仕事の休憩時間に血眼になって探したことがある。結局みつからずに、肩を落として帰ろうと送迎車に乗り込んだら、お尻になにか当たるので、何だろうと思ったら私のボールペンであった。それ以来大変気を付けている。とにかく共感の嵐の一冊である。電車の席取りが苦手なのも、みっともないという理由がよくわかるし、しゃっくりの止め方は、私が祖母から教えてもらったコップ一杯の水を息継ぎせずに1分間時間をかけて飲むという似たようなやり方で、つい先日もしゃっくりが止まらない夫に伝授したばかりだ。夫は夜、どこからか帰ってくるときにしゃっくりが止まらなくなったらしく、おじさんがしゃっくりしながら歩いているの怖いなぁなんて想像していたけれども、出先では私の方法もできないだろうしと思っていたら、この本には後ろ歩きをするとよいと書いてあったので、早速夫にも教えた。あと洟をかむというのは、これまた一緒で、ティッシュを屈託なく使うことができず、もう一度戻して次につかうというもの。私は小さい頃から大変な鼻炎で、たった一日で親があきれるほどの洟をかんだティッシュの山がごみ箱に出来上がる。だからティッシュの消費がものすごいので、ちょっとだけしか使わなかった時には、また次を使おうと箱に戻しているのだ。この本の中で、向田さんのお母様が、割烹着のポケットにしまい込むということを書かれているが、うちの祖母も、手作りの割烹着のポケットの中からガーゼのハンカチとティッシュをいつも取り出して使っていたことを懐かしく思う。なぜか、うちの母にはそういう生活感あふれる思い出がないのだが、それは母が働きに出ていて、家のことや私や弟の世話はほぼ祖母がしていたからだろうと思う。


『ひとりずもう』読了。さくらももこの青春時代を綴ったエッセイ。 この本読むと、なんでもいいからやってみようとチャレンジ精神が刺激される。何もないまま迎えた高二の三学期に転機が訪れ、高二、三学期が終わり春休みに漫画を描き始めたさくらももこ。そこから漫画家さくらももこが誕生するまでの 日々を綴った、さくらももこ誕生秘話が大好きなのだ。


『人間失格』読了。太宰さん、お久しぶりです。「恥の多い生涯を送ってきました。自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです」そうはじまる、言わずと知れた太宰治の代表作。自分の本心を語ることもなく、自分自身と周りの人間を欺き、世渡りだけでやってきた男とその男に好意を寄せる三人の女性たちの墜落。間違いなく、多感であった若かりし私が最も読み返した本だ。

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