ある日。

朝から粗大ごみにだすため、庭にあった大型のプランターを二つ運び出す。マンションを買ったときから備え付けであった立派なプランターだったが、私が植物をことごとく枯らすせいでもはやただのゴミとなり、毎年そこに蜂の巣ができるので悩みであった。ようやく粗大ごみに出せてスッキリ。それがとにかく大きいのなんのって、管理人さんに台車を借りて運んだ。運び出す際にトカゲに遭遇し、虫嫌いの夫がパニックになっていて面白かった。夫は数日前に愛犬の散歩に行き、なぜか足をねんざして帰ってきたのだが、足を引きずりながら逃げ回っている。面白かった。必死で水をかけたりしてるけれどもトカゲはびくともしないらしい。私は意外とそういうのが平気なので、見に行ったがいなかった。しかし、そのあと夫がもう一度見たらなんとまだいたらしい。それでまた大騒ぎしていた。本当に面白い人だ。

久しぶりにカフェに行ってボーっとしてくる。夫がテレワークになってから4か月くらい、なんだか毎日が忙しすぎて頭がひどく疲れていた。これからも夫はテレワークなので、そろそろ私の生活のリズムを取り戻そうと思っていたのだ。夫は私を常に尊重してくれるので、ゆっくりしてきなよと言ってくれる。アールグレイを飲みながら、手帳を見返したり、考え事をしたり、本を読んだりとひたすらボーっとする。私の隣の主婦二人が友達が全然できないと相談し合っている。もう2時間も。一人は、子どもをベビーカーにのせてマンション工事のおじさんにしか挨拶する人がいなくて寂しいと言っていて、もう一人は、保育園のママ友たちがみんなグループLINEで花見していたのに自分だけ誘われなかったと言って悩んでいた。大人になってから新しく友だちを作るのは意外と難しい。彼女たちは友だちを作るために派遣で働いたりいろいろしたらしいがなかなか気が合う人とは出会わなかったらしい。二人は土地柄、自分たちには合わないんだと結論付けた。そうそう、土地柄っていうのは意外とあると思う。

帰りに本屋パトロールをして帰る。『きみの言い訳は最高の芸術』『猫のお告げは木の下で』『子どものための哲学対話』『異邦人』『シャーロックホームズの冒険』を買って帰る。なんとなく気分は魚だったので、魚屋をのぞくと鰻がある!!今日は鰻を買って帰ろうかと鰻を眺めつつ暫く悩む。高いのだ。ホッケを焼こうと思っていたのに鰻って違いすぎやしまいか。焦ってはいかん。いったんスーパーで他のものを買ってこようと退散。そしてスーパーで買い物したら、もう持てないほどの荷物になり鰻はあきらめた。家でテレワーク中の夫にそのことを話すと、じゃぁ俺が見てくると行ってしまった。炊飯器をセットして、愛犬の散歩に行く。ずっと雨で散歩に行けなかったので、曲がり角が来るたびに愛犬にどっちに行くかを選んでもらい、愛犬の好きなように散歩をさせてみたら、果てしなくどこまでも歩いたので夫も私も最後はふらふらである。でも家に着いた愛犬は「楽しかったね、ねぇ、楽しかったね」と言って笑っているので幸せだ。愛犬はその後、ぱたりと横になり眠ってしまった。

いよいよごはんが炊き上がり、夫が買ってきてくれた鰻を食べる。立派でとってもおいしかった。夫に感謝。夜ご飯を食べながら夫が「そういえば、お昼に冷蔵庫開けたらカトラリーセットがキンキンに冷えていたよ」という。どうやら朝食のカトラリーセットを引き出しにしまわずに冷蔵庫にしまってしまっていたようだ。さらに、「きみ、今日はサッカーあるよと教えてくれたけど、たぶん明日だよ」と言われた。さらにさらに、夜ご飯を終えカレンダーを見ていたら、何と粗大ごみは明後日であった。なんと何もかも日にちが間違えていた。粗大ごみは大急ぎで取りに行った。あぁ、管理人さんに朝謝らないとな。。

吉田篤弘の『おやすみ、東京』を読み終えた。枕元に置いて毎晩ちびちびと読み進めていた。夜の東京を舞台にした連作短編集だ。夜のタクシー、ブラックバードの運転手が出てくる。タクシーは夜空いろていうなんとも素敵だ。どこにでも来てくれるタクシーなのだ。あぁ、あの頃にこんなタクシーがいてくれたらなと思う。20代前半、私はがむしゃらに働いていた時期があって、終電も乗れなかったし、始発が走る前に出社していた。だから、新宿駅の西口のタクシー乗り場からどれほどタクシーを乗ったかわからない。そして、我が家に何度タクシーを呼んだか。朝起きてタクシー会社に電話して時間と場所を伝えてから大急ぎで準備をする。もちろんタクシー代など会社からは出ないので、自分のお給料はもはやタクシー代として消えたのではないかと思った。でも、新宿駅から世田谷の自宅までの夜の街並みは本当に好きだった。気持ちが癒された。あの頃の光景がドーンと目の前に現れた。物語は、弟が行方不明の東京03相談室で悩みを聞く女性、ハムエッグ定食が好きな名探偵のシュロ、よつかどという食堂をやっている女性たち、夜の東京でそれぞれの人生が偶然にも繋がっていくというもので、静かな夜に、寂しい夜に、ピッタリな本。「運命っていうのは、自分で決めるものではなく、自分で決めなかったことの方が不思議と長続きしているように思う」というところがなんだかそうだなぁと思った。私は今、5冊だけの本屋というものをやっているけれども、これもきっとそんなものだろう。夫も私もまさかこんなに長く続くとは思わなかった。運命ていうのは本当に不思議なもんだが、私は割と運命論者である。がむしゃらに無意味にがんばっていると不思議といろんなご縁が繋がりなるようになっていくものなのだ。狙ってなにかをやろうとしている人にはきっとそういうのは離れていくのではないだろうか。運命の神様はきっとあまのじゃくなのだ。

5冊だけの本屋

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