ある日。

夫の誕生日のお祝いでウェスティン東京の龍天門に行く。夫からのリクエスト。夫は美味しいものに目がないので、いつもレストランをリクエストしてもらうことにしている。いつも思うのだが、夫の誕生日は割といい店に行っている。予約が取れない三ツ星フレンチのカンテサンス、ミシュラン掲載のモダンスパニッシュのスリオラ、マンダリンの中華で飲茶食べ放題のセンス、ペニンシュラの中華ヘイフンテラス。昨年は45歳の節目だったのでいよいよ金沢の名店、小松弥助まで寿司を食べに行った。名店の予約を取らねばというプレッシャーから、私はいつも9月ごろになるとそわそわしてくる。どうか予約がとれますようにと。夫が私にリクエストするなんて、誕生日のレストランくらいしかないのだから、おいしいものを食べてほしい。


さて、レストランに向かうと、まずちょっとしたトラブルがあって二人で顔を引きつらえた。予約したコースと違うものを説明されて、アレルギーも予約時に記入していたのにそんなもの知らないぞと言った感じで聞かれた。夫はナッツがアレルギーで私は豆乳が呼吸困難になるほどのアレルギーだ。その時点で大丈夫かなと不安になった。お料理の説明もなく、お皿の向きもごちゃごちゃでせっかくの夫の誕生日なのになと思っていたら、別の人がお詫びに来た。さらにドリンクをサービスされた。

せっかく、夫が楽しみにしていたのに、何してくれてんじゃい!と、怒り狂いそうになる。私は短気なので、よく切れる。というか、それくらいちゃんと接客してくれよと思う。一応、有名ホテルですよね。なんの想像力もない人が接客をするとこうなるのだから、腹が立つ。でも、大人なので冷静にこれは違いますよと言うし、変な向きで置かれた皿は笑いながら「なんじゃこりゃ」と言って自分で治す。こうして、開き直って笑うとどんなことでもくだらないことになるから不思議だ。いつでもこういう余裕を持っていたいと思う。いろいろあったけれど、料理は間違いなく美味しかった。飲茶四種。きのこ饅頭がとんでもなく美味しくて。野菜の炒め、最後のマンゴープリンはびっくりするほどの美味しさだった。


それから、夫が大崎のお気に入りのカフェに行きたいというので行ったら、貸し切りですと言われた。わざわざ来たのに貸し切りって。。もはや、面白すぎて、店の前でしばらく笑い転げていた。私の夫は持っている。こういう面白ネタに事欠かない。面白い。気をとり直して、別のカフェに行き二人でやけになって、飲んだこともないような激甘なコーヒーフロートにたっぷりとチョコソースがかかったような飲み物を頼み、一気飲みしたら、吐きそうになった。これもこれで面白い。忘れられない夫の誕生日になった。

私は、自分や周りの人に不幸なことが起こると、どれだけ面白くなるのかとゾクゾクワクワクと悪い顔をしてにんまりしているときがある。よって、サプライズと珍事は大好きだ。こんな私を夫は、本当に性格が悪いと、とんでもなく褒めてくれる。

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