ある日。

横浜で一番好きな中華に出会ってしまった。水綾閣である。ウェスティンホテルにある龍天門の焼き師と点心長のお店である。龍天門で黒トリュフ入り椎茸饅頭を食べたときに衝撃を受けた。点心なのに、見た目は見事にきのこのビジュアルを再現しているし、一口かじればトリュフの香りがふんだんに感じられてとてもおいしかった。IGでたまたまこの椎茸饅頭を見て、これは絶対に同じ人が作っているに違いないと思い店を調べた。オープンして間もなすぎてHPもなかった。それで何とかいろいろ調べて予約して、とうとうお店に伺う日がやってきたのだ。お店の雰囲気も、接客もとてもいい。一歩店に入れば、心地よくて上質な雰囲気。椎茸饅頭はアフタヌーン飲茶コースにしかなかったので、そのコースに。烏龍茶とジャスミン茶を、お店の方が目の前で丁寧に淹れてくれる。お茶の香りに包まれた席は、これからとんでもない料理に出会えるであろう予感しかない。いよいよ運ばれてきた最初の料理は鶏肉、豚肉、牛肉など各種焼き物や酢漬けのもの。この焼き物がとんでもなく美味しかったのだ。夫など、口に入れる前からすでに笑ってしまっている。お料理を口もとに持って行っただけでもうおいしかったのだそう。夫は美味しいものが大好きな人だ。でも最近はコロナの影響もあってなかなかお店に行けないのもあり、こういう表情見ていなかったなと気づいた。この人は本当においしいものを口にした時が最も幸せそう。続いて揚げ点心。金華ハム入り大根パイとタロイモの変わり揚げ。芋好きの夫なんてほくほくと嬉しそうに食べていた。そしていよいよいお目当ての点心。小籠包と金魚の形をした蒸し餃子、鮑入り焼売、黒トリュフ入り椎茸饅頭。最高だ!最高だ!最高だ!嬉しい!思わず嬉しくて、コトの顛末をお店の方に話してしまう。ずっと見ていたいけれどやっぱり点心は熱々のうちに食べないとと満を持して食べる。間に旬野菜の炒め。これが驚くほどの美しさだった。北京ほうれん草?らしき青梗菜のようなものの芯の部分を綺麗に斜めにそろえて鎮座させている。こんなにも綺麗な色、油の輝き、食感は体感したことがなかった。それから夫は五目チャーハン、私は胡桃担々麺。デザートプレートは小鳥の焼き菓子、小豆入り胡麻団子、フルーツの盛り合わせ、マンゴープリン。お腹いっぱい、苦しい。でもおいしいものをひと口も残したくない。そんな意地で食べきった。幸せである。


お腹いっぱいになったので、散歩する。大さん橋にてドラマ「大豆田とわこと三人の元夫」ごっこをする。松たか子が大さん橋でひったくりに合い斎藤工に助けられて、出航!と手を挙げて写真を撮ってもらうというところだ。これを永遠に一人でやっている。何が面白いのか、一人で二役セリフを言い、一人で笑っている私。あきれながらもそれを写真に撮る夫。たのしかった。そして、テンション上がったのか山下公園でバラのイベントをやっていたので隅々まで花を見て回る。写真を撮る。ふと気づくと向こうの方からいかにもゲリラっぽい雲。怖い。私は雷が来ると怖くて怖くて一歩も動けず固まってしまう。なので、ホテルニューグランドに駆け込もうと夫に言う。でも夫が「あっちに俺の好きなカフェがあったからそこに行こう」と言う。いやいやそこまで行く前に雨が降るよ、雷が来るよ、私はトイレにも行きたいのよと思いながらも、もう一度「ホテルならトイレも綺麗だし、ラウンジでコーヒー飲みながら待てばいいじゃん」とごねる。でも、私の意図を一向に理解できないのか、夫はすでにカフェに心が向いていたようだったので、そのカフェに行く。カフェに到着すると、コロナの影響で、テラス席のみとなっていた。え、ゲリラなのにテラス?「雨降ってきそうなんだけど、テラスって濡れないですか?」と店員さんに聞くと、屋根があるので平気ですよと言う。夫はどうしてもここがいいと言うので、もちろんテラスでもOKなのだろうと思って、夫の顔を見ると、口を閉ざしたまんま固まっている。よくわからないので、それならここにしようとメニューを見始めたら、突然夫が「俺、雨なのにテラスなんてやだよ」と言う。あきれた。じゃぁ、この先にカフェがあったからそこまで走ろうと、店を後にする。そうして、トイレを我慢している私は、下腹部を抑えながらそっと小走りしていたが、どうにも激しい雨が降ってきたので、もうどうにでもなれと笑いながら走っていた。やっと入ったカフェは運よく席が空いて、座ることができたので、ゲリラ雷雨が通り過ぎるまで雨宿りをした。カフェラテを飲み終え、どうにもトイレが綺麗とは思えないカフェで勇気を振り絞ってトイレに行き、スッキリした。夫もあきれているが、もはやあきれているのはこっちである。カフェでいろんなことを話していたら、雨も止んだので、引き続き散歩する。ちょっと気になった物件があったので、それを見に行こうと二人で行く。マンションの入り口に、でかでかと犬禁止!と書いてあった。とてもよさそうな物件だったのに、うちの愛犬が住めないんじゃ仕方ないとあきらめる。そのでっかい看板のすぐ隣に高級ペットショップが入っていて人でごった返していたのが何とも複雑な気持ちだった。

帰り道、ウチキパンで紅茶のクリームパンとチーズパンなど買い、伊東屋で文房具を見る。欲しいノートがあって買おうと思って値段を見たらなんと3,800円もして、高いのであきらめた。その横で、夫はおそらくそのノート買ってあげようと思っていたらしい夫はさらに驚いていた。駅までの道のりで花屋があったので花を買う。私は欲しい花があったのに、夫は執拗にあっちの花の方がいいんじゃない?と言う。でも欲しいものがあるからと自分で決めた花をレジに持っていったら、なんと夫が買ってあげるよと言ってお金を出してくれた。きっとノートの罪滅ぼし。だから、自分の好きな花を推してきたんだなと、その時に気づいた。まったく。わかりにくい夫だ。

本日の歩数、15,000歩。たくさん歩いた日は、楽しい一日のことが多い。


伊坂幸太郎『ラッシュライフ』読了。伊坂幸太郎の本はどうしてこんなに想像力が掻き立てられるのだろうか。心が動くどころではない。行動も変わるのだ。「優しいって字はさ、人偏に『憂い』って書くだろう。あれは『人の憂いが分かる』って意味なんだよ」「ようするに?」「想像力なんだよ」っていうところ、あぁ、この人はこのころから人のやさしさと想像力について書いているんだなぁと。泥棒の黒澤もでてきて嬉しい。

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