ある日。
もうすでにお昼になるというのに、今日やりたいと思っていたことがなに一つ手を付けられないでいる。暑い。32℃を超える暑さの中で、エアコンもつけずに家事をやり、私はいつになったら今日やりたいとワクワクしていたことに取り掛かるのかとってもイライラする。私は、いつも計画倒り、締め切りに追われて余裕がない毎日を送っているので、一念発起計画上手になろうと無印で買ってきたバインダーにマンスリー、メモとして普通のルーズリーフを差し込みダイニングテーブルに置いた。夫は基本的に時間が決まっているので昼休憩以外は自室から出てこない。仕事中のため私も話しかけない。ただ、夫には私が一日何をしているのかは見えないらしいので、マンスリーにすべてのスケジュールを書き出し、メモにやることや仕事のことを書いた。夫も見れるように、それを見ながらスケジュールを考える。基本的にお互いのスケジュールはGoogleカレンダーで共有しているが、相談したいときなど可視化しておかないと夫と話すには困難だ。それで朝、それを見ながらお互いのその日の予定ややりたいと思っていることを話すようにしたら、サクサクと物事が進む。嬉しい。
新規案件、先方もOKだったようで安心する。選書は、本当に毎回いまだにドキドキする。そして、お客様からメールが来るとホッとする。愛犬の散歩に行ったら、またしても疲労と貧血。ソファーで休む。どうしても甘いものが食べたくなり、コンビニに行くという夫に頼んでシュークリームを買ってきてもらう。甘いもの、体に沁みるー。
夜、カツオの刺身に香味ダレをかけて食べる。夫は香味ダレが好きなようで大喜び。他に枝豆、キャベツのおろし和え、キノコとピーマンのオイル煮、ひじき煮、納豆、豆腐の味噌汁など。疲れていて料理は今日は適当だぞーと思っていると、なぜかあれこれ作り始めてしまって、結局いつもより盛りだくさんになる。最近は、どんなに疲れていてもこうして料理ができていて、あぁ、私は生活を疎かにしていないんだと、自分をちゃんとコントロールできているんだと認識するだけで、寝る前にとっても充実感を感じている。
『とるにたらないものもの』江國香織、読了。 江國香織の愛するものへの思いや記憶とともに綴られている。「私は臆病な子供だったので、迷子になった記憶がない。いつも大人の手なり服の裾なりを、しっかり握りしめていたからだ」「その後勇敢な大人になったので、いまでは終始迷子になっている」というところが好きだった。私もとても臆病な人間なので、いつも母に置いて行かれないようにと、必死で母親の水色のワンピースの袖をギューッと握っていた。まだ赤ちゃんだった弟は母親の腕の中にこれほど安全な場所はないだろうと言った感じで抱っこされていて、私も本当はそこに抱かれたかったけれども、お姉ちゃんぶって必死なふりをして母親のワンピースの裾を何があっても絶対に話すのかと負けん気の強さを発動して握りしめていた。母親の淡い水色のワンピースは私の手汗によってそこだけひどく濃いブルーに変色していた記憶がある。
他には、「ケーキという言葉には、実物のケーキ以上の何かがある。私はその何かがすきだ」「ケーキという言葉の喚起する、甘くささやかな幸福のイメージ」というところ。私は甘いものが好きではないのに、ケーキが好きなのはきっとこの非日常的な幸福が好きだったのだと気づいた。味とかではないのだ。小さい頃から生クリームが苦手でケーキを食べれなかった私に、それでもお誕生日なんだからといって母親はホールのケーキを買ってきて家族でお祝いをしてくれた。みんなとても幸せそうに食べていた。私はそれがぐでんぐでんに崩れても食べれなくて、その向かいの席で喜んでケーキを頬張る弟の姿と祖父の姿をぼんやりと眺めていた。今でも、ケーキは時たましか食べれない。けれども食べられないからこそ私はケーキに憧れを抱き続けているのかもしれない。
あと、「戸外で食べるお弁当に、固ゆでの玉子を殻ごと持っていき、その場でむいて、いい空気の中でぱくりと味わう、ということのできるひとに憧れる」とある。これは、まさに私もなのだ。いつだったかディズニーシーで夜のショーを見るために席を取っていた時、私たちがディズニーシーのあちこちで買ってきたフードを楽しんでいる真後ろで、母親と小さい子供たち二人そして祖母らしき家族連れがいた。そこで、おばあちゃんが「ゆで卵をもってきたよ~」と言って、透明な袋からゆで卵を出して殻をむき始めた。アルミホイルにしっかりと包まれた塩もあってそれを子どもたちが頬張っていた。それを見て、あぁこのおばあさんは暮らしをしっかりとしてきた人なんだなと感じた。こういう場面に遭遇するとなんだかジーンとしてしまう。私は卵が苦手だったから毎朝出てくる目玉焼きですらも、母親が見ていない隙にこっそりと弟のお皿にパスしていた。
お風呂は「短くても決定的な、現実からの異空間へのスリップ」っていうところも面白かったし、以外にも江國香織さんが競艇を見るのが好きというのもよかった。そして、なんと言っても、おもしろい推理小説があれば、私は日々健やかに機嫌よく暮らしている。これは大事な事だと思う。っていうところがよかった。とるにたらないものものは自分で自分を幸せにするもの、ときめくものなのだ。日常の中で自分を機嫌よくするための大切なものに気づきます。
0コメント