ある日。

台風の影響で大雨予報。夫は予約していた美容室に行くという。え?台風なのに?電車を乗り継いだ先も長々と歩くという美容室へ?あきれたが、本人は行くというので見送った。

朝食、ツナサンド。

外は雨だし出かける気にもなれず、最近のメンタル複雑骨折を何とかしようと村上龍『限りなく透明に近いブルー』、村上春樹『風の歌を聴け』を読む。この複雑さがいいんだよなぁと思いながらそれらを本棚に戻し、Amazonprimeで「弱虫ペダル」を観る。感動。インターハイをかけたレースで、一年のスプリンターが「おまえはチームのために死んでくれ」と言われるところがもう大号泣だ。そして、ゴールのシーン。何百人とスタートし、チームでトレインを組み、たった一人を優勝させるために、他のチームメンバーは犠牲になる。そして、その優勝争いは数百キロと走ってきたにもかかわらず、たった数秒の違いで起こる。美しいスポーツだ。私は、美しいものが好きだ。続いて「響」。これも面白かった。面白かったので2回観た。

そうこうしていたら夫が返ってきた。ずぶぬれでかつ丼を持って帰ってきた。夫は濡れることが極端に嫌いなので、お風呂に入るかと思い用意しておいたが、今日は疲労しすぎて入る元気もないらしい。タオルで拭いた後、二人でかつ丼を食べる。行くときはほとんど濡れなかったのだが、帰りに美容室を出たら、滝のような雨が降ってきて目の前が全然見えなかったらしい。それなのに、前には土砂降りの中サンダルで軽快に歩く女性と、杖をもった目の不自由な女性がいたらしく、夫はこんな雨で健常者でも大変なのにと思い、思わず声をかけて駅まで一緒に行ってあげたかったが、自分よりもしっかりと歩いていたし、急に男から声をかけられたら驚くんじゃないかと思いやめたらしい。

かつ丼を食べ終えて、ベッドで引き続き映画タイム。「マイプレシャスリスト」、おもしろかった。緊張している主人公に向かって、「肩が耳たぶまで上がっている」という表現があった。私は緊張したり力むと肩が上がっているらしく、よく夫に「まず深呼吸して肩をおろして」と言われるので、きっとこういう状態なんだなと初めて理解した。こんなにもゆったり過ごせたのは久しぶりだった。


『風の歌を聴け』は、「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね」この書き出しからはじまる村上春樹のデビュー作。生きていく複雑さ、世の中で起こるどうしようもないことなどを書いた小説。絶望、感受性強すぎるとき、自分の複雑さを和らぐほどの複雑さを描いている。

 

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