ある日。

実家に帰る予定だったが、コロナがひどい広がりを見せているので延期。コロナになってからほぼ帰っていないので、母の体調が気になる。


いろいろと精神的に病んでいたので、夫が気遣って外に連れ出してくれた。お気に入りの洋食屋でステーキ&ライスのランチセットを二人で食べる。山盛りのサラダにはサウザンドレッシングがかかっていて、懐かしい感じのコーンスープがついてくる。子どもの頃に家族でステーキ屋さんに食事に行ったことを思い出す。ニンニクたっぷりのソースがかかったステーキをモリモリ食べて、コーヒーを飲み終える頃には、それまでの憂鬱がどこかに行っていた。


鎌倉文学館に行く。前の日にドラマ「ミステリーと言う勿れ」で登場していたのを見た夫が気になったよう。薔薇の季節がきれいなんだよなぁと思ったが、向かう。門をくぐってから、チケットを買う入口までの石畳とアーチになっている木々たちがよかった。建物は一切見えない。チケット売り場のおじさんは、こういう施設にしては接客がいい。いらっしゃいませ、こんにちは。とはきはきと大きな声で言うのでこんにちはと答える。チケットを片手に、トンネルをくぐり、建物に向かう。建物の中に入ると、バレンタインデーが近いということで、文人たちの愛の言葉がおみくじでもらえると言うので、言われた通りおみくじのボタンを押す。慌ててお姉さんが「そんなに強く押さないでください。もう大丈夫ですよ」と笑って言う。私のは、萩原朔太郎の言葉であった。

「君まつと一日は楽し

君を恋ふと千夜は

果敢なき夢みてしがな」

どうです?ぴったりですか?とお姉さんに言われ、夫を隣にしてそんな恥ずかしいこと言えるわけないだろうと思いながらも、ええそうですね。と返す。

中には、文人たちのゆかりの鎌倉地図があって、それを夫と念入りにみる。ステンドガラスも美しい。入ってすぐに、川端康成の『山の音』の直筆の原稿があり感銘。康成さんの直筆ってなんかかわいい。ありとあらゆる文人たちの直筆原稿が本当に楽しくて何時間でもそこにいたい。太宰治の字がいまどきっぽい字だなと思っていると、隣の夫が、「芥川龍之介なんてもっと荒々しい字のイメージなのに、太宰治よりかわいい字だよ」という。本当にかわいい。しかもこの方はしるこが好きだったとのことで、しるこを広めるための文章を書いていらしたという。なんと可愛い人なんだ。一通り見て、庭園に行く。平日の昼間ということもあり、誰もいない。芝生に寝っ転がったら気持ちいいだろうなと思った。薔薇の季節にまた来たい。野生のリスもいて驚いた。


それから甘縄神明社にお参りに行き、お礼を言う。歩き疲れたのでBelgfeldにてお茶。シュークリームと紅茶のセットを、夫はモカエクレアと紅茶のセットを頼む。歩き疲れたので帰りは電車で帰ろうと語らう。


帰りに電気屋でワイヤレスイヤホンを買って帰る。どうもいろんな音に敏感になるデリケートな時期があって、その時にイヤホンで音楽を聴きながら寝ることにしている。完全ワイヤレスイヤホンだと横むいたときに、ピピッと止まってしまう。有線だと首に絡まっているらしい。そこで寝るのに適したイヤホンを買った。密閉度が高くて良い。早速それで眠る。

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