ある日

春一番。そんな日に、夫が誕生日のお祝いをしてくれた。私はケーキやスイーツよりも、お洒落なフレンチよりも肉が好きである。ちなみに私のなかで挽肉は肉に入らないため、ハンバーグはちょっと違う。焼肉とか鉄板焼きが好きだ。そんな肉好きな妻のために鉄板焼きのお店に連れて行ってくれた。そこはウェスティンホテル東京の中に入っている鉄板焼きのお店だが、私たちはその系列のお店が大好きなので、ここを予約してくれたと知ったときには思わず小躍りした。鉄板焼きっていうのは、どうしてホテルの中でないと食べられないのだろうか。でも、最高の眺めである。そこで、ちょっと控えめな、真面目そうなシェフが私たちについてくれた。私は何といってもこの目の前で焼いてくれるというところが大好きなのだ。もう、それを見ているだけでワクワクしてくる。前菜三種を食べ終わった後、シェフは、帆立とほうれん草とヒラメをまず焼いてくれた。ああ、私は帆立に目がない。帆立が大好きなのだ。そのことを夫に言うと、「きみが帆立を好きだったなんて初耳だ」と言った。私はイカとタコという軟体動物は決まってお腹を壊すのでそれを外では食べないようにしているのだけれども、どうやら夫の中では帆立もこの部類に入っていたようだ。私は軟体動物は苦手だが貝類は大好きである。そんなことを話しているうちに、出来上がった。うーん、美味しい。私たちはコスパを割とシビアに考慮するたちなので、ランチセットを選ぶことが多い。そうすると鉄板焼きの場合、魚介類はコースに含まれないので、私は同じテーブルの誰かがそれを食べていると恨めしそうに見る。ところが、何とこの日は魚介もついてくる。その喜びと言ったらない。もう、お皿を目の前に置かれた瞬間に帆立を食べ始めた。四の五の言わずに熱いうちにもくもくと食べたいのだ。そんな妻を眺めている夫も幸せそうだ。

あっという間に食べ終え、肉に。珍しくフィレ肉を選ぶ。ミディアムと焼き加減を伝えたのだが、もしかしたらそれは焼き過ぎではないのか??と心配になる。はぁ、と思いながらもおいしくいただく。白米をガーリックライスにしてもらう。ここのお店のガーリックライスはとても美味しいと食べログに書いてあった。本当に美味しかった。というか、シェフが奥の棚からひっそりと出す大きな丼の中から出てくるガーリックチップがとんでもなく美味しかったのだ。私があまりにも美味しい美味しいというので、シェフが私の皿におかわりをのせてくれた。私にはよくこういうことが起きる。隣で夫が驚いている。だって私はにんにくが嫌いだからだ。あまり摂取すると体調が悪くなるし、夫が会食などでにんにくの香りを纏わせて帰ってくるだけで具合が悪くなるのだから。でも食べてしまった。私たちはお酒を飲まないのもあって、食べ終わるのが他のお客よりも圧倒的に早い。

その後、個室に移りコーヒーを頂く。大きなあまおうとコーヒー。あぁ、最高。そう思っていたらお祝いにと苺のショートケーキを頂いた。そのケーキがとんでもなく美味しかったのである。腰を抜かすほどおいしかった。私は生クリームが苦手で、もしもショートケーキであっても、さっぱりとしたクリームが好きなのだが、これが最高のクリームとスポンジのバランスなのだ。ソファに寝転がりたいほどたらふく食べた。

そして、夫と昔よくデートをした東京庭園美術館に行き、そこでぼーっとして過ごした。腹ごなしにたくさん歩いて気持ちよかった。この庭園は本当にいつも美しくされているので、200円以上払ってもいいんじゃないかといつも思う。ここで夫が写真を撮ってくれた。私の遺影となるような写真。たぶん、お葬式はしてもらいたくないのでやらないと思うのだけど、私はいつも遺影をとってもらう。楽しい一日だった。


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