ある日

世間は新型コロナウイルスが大騒ぎだが、私も突然具合が悪くなった。夕方に急に悪寒がしてきて、どうにも気持ち悪くてベッドで横になっていた。ところがいよいよトイレから出れなくなり、微熱も出てきて、変な咳も出てきた。これはもしや私も感染したのだろうかと不安になり、ネットで初期症状がどんなものかを調べまくる。私は産まれ持って虚弱体質のため、若い人は感染しても平気だと書いてあっても信じられない。不安になり、泣きじゃくりながら夫に電話する。「私、コロナに感染したかも。都内をウロチョロ歩いたりしていたいのがよくなかったんだきっと」と伝える。そんなことを言いながらもオエオエしている私の尋常じゃない様子を察知したのか夫が早退してきた。その様子を伝えると夫も必死にネット検索をする。

「あのさ、たぶん君の症状、カキに当たったんだと思うよ」という。でもあれは2日くらい前のことである。次の日に何も来なかったので安心していたのだが、やぱりそうだったのか!!きたのか!とうとうあたってしまったのだ。先日食べた生ガキに。自慢ではないが、私はこれまで一度もあたったことはなかったのだ。でも、うすうす予感があったので仕方ない。原因がはっきりわかって安堵したものの、とにかくトイレから出れないのである。これまでその症状は聞いたことがあったが、これほどまでの地獄とは。上から下からとにかく止まらないのだ。安堵してベッドに戻っても、すぐに吐いてしまう。私は小さい頃から変なところで潔癖というきれい好きがあって、トイレ以外では吐いたことはない。という、極力吐かないように我慢するのだ。しかし、もう夫のまえだとか、ベッドだとか、気にしていられないほどのヤバさなのだ。夫がネットで検索したポカリを飲みながらとにかく出すということをやっていたら、丸二日かかって回復した。いや、凄まじい二日間だった。

しかし、私はトイレで出すたびにカキが頭によぎるのだ。夫に支えられてベッドに戻るときにもカキが浮かんでくる。挙句の果てに夫に「あぁ、カキが食べたい」と言い続ける始末である。夫もあきれている。どうやら一度当たったことがある人は、なかなか次もまた食べようとは思わないらしい。事実、夫もかつてボンゴレにあたったことがあるそうなのだが、10年くらいは食べなかったらしい。そんなことを聞いても、食べたいものは食べたいのだから仕方ない。あぁ、愛しいカキよ。また、食べたいわ。


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