ある日。

真夏のような暑さ。昼、ペペロンチーノ。愛犬、新しい病院でトリミングしてもらう。いつもいくサロンのトリマーさんはサービス業らしく接客にこなれた感じで、可愛らしい感じだが、今回のトリマーさんはいわゆる地味で会話がぎこちない。けれどきっとこういう人が寡黙にいい腕しているのだろうと思う。お願いしている間、ミスドでお茶して休む。いつものチョコファッションではなく、ごてごてとしたポンデリングにチョコがかかっていてさらに間に生クリームが挟んであるやつを選んだ私を見て、「どうした?」と驚いている。私も自分でどうしたと思っていた。コロナで席数も減りガランとしたミスドに次から次へと人が入ってくる。みんなドーナツを選ぶ姿は真剣でその様子を見ているのが楽しかった。定番を買う人はスパッと選ぶし、ドーナツを目の前にあっちへ行ったりこっちへ行ったり何往復もして吟味して選ぶ人もいるし、トレーにもうのらないぞって言うほど大量に買っている人もいる。夫と二人その様子を見ながら、「ナイスチョイス!」とか「あぁ、その組み合わせは意外とよさそうだね」とか話していた。楽しかった。驚いたのは、ミスドは意外と男性客が多かった。家族に買ってきてと頼まれているお父さんたちらしきひとや、スーツ着たサラリーマンも買っていく。案外女子よりも甘党の男子の方がミスドを利用するのねなんて思った。そういえば、会社員をしていた時の上司が締日の次の日になぜか必ずミスドを大量に買ってきて部署の全員に配っていた。あの時は私も若かったので、なんでドーナツなんだろう。ここで食べるには受け皿もないし、口回りも手も汚れるのに配慮がないなぁなんて思って私は食べたことがなかったけれども、周りの女子たちは大喜びで食べていた。こういうのを狙っていたんだろうなと思って冷ややかな目で私は見ていた。下心丸出しのドーナツはなんだかとてもかわいそうだった。

カットを終えた愛犬は、何と黄色いブリブリなリボンがついていた。うちの愛犬はそいうのを好まない、私たち夫婦もそのため愛犬はそれを必死に取ろうとしている。可愛い感じと言うかブリブリしたお姫様のようなフェミニンな感じだが、可愛いので、ぎこちない笑顔でお礼を言って帰ってくる。帰り道、自転車のかごにいる愛犬がキュンキュン泣き始めた。いつもそんなことないのに、とにかく人通りの多い駅前に愛犬の泣き声が響き渡っている。どうしたのかと思ったら、トイレだったようだ。家に着くなり急いでトイレに行っていた。珍しいことだったので夫も私も驚いたけれど、笑ってしまった。

森博嗣のクリームシリーズを読み返している。すでに半年に一回だか三か月に一回だか読み返している学び多き本。中でも『つぼやきのテリーヌ』は、上から目線の人にモヤモヤしたり、余裕がないときとか、我慢ばっかりして嫌な気分のときとかに読むとすっきりするので読む。そう、私は上から目線の人が大嫌いだ。いつも「お前が私の何を知っている」と思っている。人の表面だけ見て判断して、裏の努力とか苦しみとかなんも知らないくせに偉そうなこと言わないでねと思うのだ。浅はかすぎる。あとは、著者が奥様から疑問形が多すぎると指摘されるところがあって、共感の嵐である。何を隠そう、うちの夫も何でも疑問形で返してくるのだ。例えば、私が「〇〇に行かない?」「〇〇したいのだけど手伝ってくれる?」とか言うと、「なんで?」「どうして?」と聞かれる。いやいや行きたいからだし、したいからだけど、それ以外に理由なんてあるのかなと思うし、あぁ、きっと嫌なんだろうな。だから「どうして?」とか聞くんだろうなと思うのである。それに聞かれて、説明するのがもう面倒で仕方ない。そのためあきらめて、「やっぱりいいよ」と断ると、夫は私がキレたと思ってこびへつらってくるのである。このやり取りが毎回面倒なのに毎回やるのだ。でも夫は察知するとか推測するとかせずに論理的思考に基づいた事実だけを客観的に受け止めるため、きっと本当に理由を聞いているだけなのだ。冷静に質問しているのに何で答えないのだと思っているのだと思う。それが私の唯一夫にイライラするポイントで、それが書いてあったので「奥様!私も同感です!」と強く手を握った。この本の中でメモした言葉、「『明日やろう』『今度やろう』と考えるばかりで腰を上げない人が多く、結果として自分が欲求不満になる」っていうところ。私は効率を重んじるあまりにやりたいと思っても、こういう順序でやったほうが効率よく無駄な時間が省けるからこうしたほうがいいなと思って感情を無視してスケジュールを組むことが多い。そのため、やりたいやりたいーとモヤモヤしてきて、さらにはイライラしてくるのだ。だったら効率とか考えずにやりたいことをすぐやろうと思ったので手帳にメモした。そして、やりたいと思ったことから順に終わらせていくようにした。残念ならが私には家族がいるのでかなわない時もある。けれども、夫には思いついたその時にやりたいことを伝えるようにしている。夫は私が我慢できない性格だということを十分に理解していて、だから妻を最優先で何でもやってくれる。それに尊重してくれる。よって、いまのところ私の日常は平和だ。だって我慢せずにやりたいことをやっているのだから。何事も我慢はよくない。欲求不満になって、余裕がなくなり、人にやさしくできなくなるからだ。

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