ある日。

休日だというのに、朝からせっせと働く夫をよそに寝坊した妻。寝ているときに遠くから夫のよそよそしい声が聞こえてきて、あぁ、とうとう夫も寝言を言うようになってしまったかなんて思っていたら、隣の部屋でテレビ会議中の夫の声であった。どおりでかしこまった話し方だった。のそのそとベッドから起き出して、朝食を作る。目玉焼き、ウインナー、夫が半分にカットしてくれた全粒粉パン、ヨーグルト、カフェオレ。最近疲れのせいかやたらと卵を欲する。前の日の夜から卵が食べたかったので、うれしい。果たして夫は朝食は食べたのだろうかと一人分を作ってから我に返る。夫は働いているのに、申し訳ないなぁ。それにしても久しぶりにいい天気。どこかに行こうと夫と話していたような。。。そうだ、とある稲荷神社に行こうとしていたんだっけ。と、調べてみると、なんと、心霊スポットと書いてあった。私は別に見えるわけじゃないのだが、なんだかそういうエネルギーに敏感なようで、伊勢神宮に行った時もひどい目にあったため、しり込みする。会議を終えた夫がやってきて、そのことを言うと、きみしらなかったの?なんてのんきに言う。通りでそういうのに弱い君がいこういこうというはずだ。。でもパワースポットっていうのはそういうことでしょと言われる。そうだったのか。パワーとはそういうパワーだったのか。怖いため、あんなに行きたがっていたのにあっけなく予定を変更。


喫茶店にこもって読書することにする。夫もうれしそうに読書していた。コロナの影響で、こういうかけがえのない時間も久しくなかったのでうれしい。やっぱり読書はチェーン店に限るよね。ほどよくわちゃわちゃしていて、コーヒーも出してくれる上にほったらかしにしてくれるという最高のサービス、万歳。そして、数時間をそこですごし、スーパーに寄って帰る。エコバッグの他にビニール袋も持参したので、生ものをそのビニール袋に入れる。家についてその袋を見たときに、果たしてこの袋はいつまでエコ活動すべきなのだろうかと考える。お肉や魚を入れた袋をさらに規則正しく折りたたんでコンビニなどで使うのは抵抗がある。そこで夫と真剣に考える。我が家では生ものをいれたらその袋はごみ袋にしてさようならすることにした。私は、こういうものを果てしなくつかってしまうケチケチばばぁなので、やぶれるまで使うことになりそうだった。衛生的にどうか考えてよかった。


喫茶店で読んでいた、アガサクリスティーの『春にして君を離れ』。あぁもうこんなすごい作家は二度と出てこないだろうなぁと毎度毎度本を開くたびに思う。あらすじは、弁護士でやさしい夫、3人の自慢の子どもたちに囲まれて順風満帆な生活を送ってきたジョーン。ある日、ジョーンは末娘の急病のため滞在していたバグダッドからロンドンに帰る途中で15年近くぶりに旧友と会い、その後、汽車が来ず砂漠の真ん中のレストハウスで何日も足止めされたことをきっかけに初めて自分と向き合うようになる。やがてこれまで自分の信じていて疑わなかった家族の幸せ、自分自身について考えるようになる。夫婦とは、親子とは、家族とは、などについて改めて考えさせられる名著だ。きっとジョーンのような家族を持っている人って結構いると思う。これだけ、世間で毒親という言葉が広がり、実際に5冊だけの本屋では親との確執に悩むお客様からの選書の依頼も多い。子どもというのは親のことをよく見ている。本当によく見ている。子どもがいない私が言うのもなんだけど。自己満足で、自分では犠牲を払わない。責任を取らないのに、なによりも親に対する信頼を得ようとしたり、親は尊敬されるものと思っている。そういう親を子どもはよく見ているのだ。そういう理不尽さを子どもとは感じるものである。自分の保身のためなのに、あなたのためよと言ってくる人には要注意である。母親たちの勇気や責任、そしてほかの人のことを考えてあげる愛の大切さを全力で叫んでいる本だ。究極の愛の話。愛とは大切な人にやりたいことをやらせてあげること。文字にしてしまえば簡単なこのことも本当に難しいのだ。どうか、たくさんの母親たちが勇気を持ち、見せかけ、ごまかしで生きませんように。

「我々世の親たちが子どもに対していったい、どういう仕打ちをしているか、考えてもごらん。おまえたちのことは何でも知っているといわんばかりの態度。親の権威のもとに置かれている力弱い、幼い者にとって、いつも最上のことをしている、知っているというポーズ」

「一種の奴隷じゃないか、彼らは。我々の考える食物を食べ、着せるものを着、我々の教え込むことをしゃべる。我々の与える保護の、代償としてね。しかし子どもたちは、日一日と成長し、それだけ自由に近づくのさ」

これはジョーンの夫の言葉だが、きっとこの言葉に救われる子どもたちは結構いるのだろう。たくさんの女性たちに読んでもらえますように。




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