ある日。

なんだか、最近いまいちだなぁ。運気が低迷しているなと思っていた。いや、七月に入ってからずっとそう思っていて、忘れていたけれども私はゲッターズ飯田の本を買っていたので引っ張り出してみてみたら、なんと7月から9月まで運気がよくないと書いてあった。当たってます、ゲッターズ飯田様。そんな時には、私の運気を回復する店に行くことにしているので、おなじみのカフェででっかいケーキとアイスティーをいただく。が、とにかく行列で、暑いし、マスクで息苦しいし、嫌になる。やっとは入れたので、イチゴのショートケーキを、夫はメロンのショートケーキを頼む。夫はメロンが大好きなのだが、残念ながら私がメロンアレルギーのため我が家では出ることはない。そのため、夫は嬉しそうに食べている。二人でもくもくと食べる。いつも私がここのケーキを食べたがるくせに、だいたい半分くらいで満足してしまい夫にいくことになる。そのため、夫の方に渡していたら、隣のテーブルに大きなケーキが三種類きた。ご夫婦とすっかりお父様の胸の中で眠っている赤ちゃんの三名。なのに、三個。驚いてみていると、ご夫婦が三種類のケーキをまるでビュッフェのように好きなようにちびちびと食べている。チョコレートのケーキを食べたら、ブルーベリーのケーキを食べたりと、そしてその奥様の一口の小ささよ。フォークの端っこにちょっとクリームだけをつけるようになめるように食べている。なんだか研究しているようにも見える。奥様はケーキ作りが趣味なのだろうか。何はともあれとても楽しそうだ。

それからZARAにて毎年おなじみのTシャツを白と黒2枚ずつ購入して、本屋で本を買って帰ってきた。楽しいコースだ。そして、また夫に、「ねぇ、ケーキってランチなの?ランチは何を食べるの?ねぇ、僕はランチに何かを食べてからケーキを食べたい気もするけれども、一応予定を教えてくれない?」としつこいくらい聞かれた。私は、食べたいものがあるとそれはランチだからとか、お茶だからとか、関係なく食べたいものしか食べたくないので、こういうことになってしまうのだ。でも、こういう時はまれで、大体において出かけるときには、夫に食事は一任している。夫はお酒を飲まないせいもあるけれども、ちゃんと三食規則正しく食事をし、食後のデザートも欠かさない。こんな生活をするようになったのだから、太ったのも無理ないなといつも思う。


川上未映子の『すべてはあの謎にむかって』を読む。この本はきっと川上未映子作品の中でもなぜかそんなにメジャーではない。でも私は大好きでよく読み返す。この本を買ったときのことを今でも鮮明に覚えている。文庫化されてすぐなのに、あまり大々的に売られていなくて、平台にちょっとだけ恐縮気味に並んでいた。それでも、川上未映子好きとしては手に取らないわけにはいかない。買う気でちょっとちらっと中を覗いてみたら、一瞬で強い衝撃を受けるほどの文章と出会ってしまい、立ち読みしていることを忘れて次から次へとページをめくった。ではその最初の衝撃とは何だったかと言えばこの文章。「心の友はいつだって文庫本だった」大人になった今は私でさえもおしゃれなハードカバーを買うことができる。でも収納の場所も限られているので、応援している作家の中でも本当に好きな一部しか買えない。でも子どものころって、なけなしのお小遣いを持って本屋に行っても漫画を一冊か厳選した文庫一冊出会った。だから私は毎日本屋に入り浸っていたのだから。だから、私が買う本と言えばもっぱら文庫本であったのだ。よって、私の人生を支えてきたのは文庫本。そんなこと考えもしなかった。この文章を見て、あ、きっとこの本は本への、物語への愛情が詰まった本だと思った。買ってよかった。買ってそのあとすぐにカフェに行き大切に大切に読んだ。東日本大震災、著者自身の妊娠の時期などの2010年~2012年5月までにつづられたエッセイのため、もちろん鬱々とした感じのエッセイもあるからこれから読まれる方はご注意を。

前向きな人と後ろ向きな人について、赤ちゃんがやってくるときのこと、誕生日におめでとうというのがこわかった子供、雪降る日に思い出す宮沢賢治、飛行機嫌いについて、必ず夢を見る、眠りの効用について、発行部数、原稿料について、読者に遭遇した時のこと、夢みる人を支えているのは、意表を突くこと、運と縁についてなど、とにかく共感するものばかり。私は常に後ろ向きというか常に最悪の状況について鍛錬している。例えば、蜂に刺された時の対処法とか、落雷した時に助かる方法とか、通り魔に遭遇した時の逃げ方とか、そして、それを夫にも伝えている。夫はそのたびに笑う。それに私は誕生日が来るたびにまた死に一歩近づいたと思い恐怖だったし、絶望するといつも宮沢賢治の告別を読むし、飛行機なんて大嫌いだし(中国に行ったときにものすごく悪天候に見舞われものすごく恐怖体験をした)、かならず夢は見るしみんなもそうだと思っていたし、相手の意表を突くのはもはや私の生きがいと言ってもいい。それに、運と縁はわりと大事にする方で、私のモットーは「すべては運とタイミング、すべてはバランス」である。だからもう私の気持ちが丸ごと詰まったような本だ。

特に、「夢みる人を支えているのは」というところが大好きで、ここは何度読み返したか分からない。「フィクションにしか到達できない場所や治癒があり、わたしはそれをとても信じている」というところ「フィクションをつくってお金を稼ぎ、夜は眠って夢をみて、目覚めてからもなお『夢想家』でいることができるのは、たとえば家を流され家族を失い、なにもかもを失い、夢をみることもままならない無数の人たちの、それでも希望や夢を見ようとせずにはいられたないほどの現実があってこそなのだから」というところが好きだ。この部分が、特に強烈に好きで何度も何度も読んでいる。私の思いがそのまま言語化されているから。

人は、本当にどうしようもなく苦しかったり、辛かったり、光も見えないほどの絶望の中にいるときは、想像することでしか救われない現実があることを私は身をもって体験したことがある。そのときに私が救われたように、ほんのちょっとでも気分転換になったり、前向きな気分になったりしてもらえるきっかけになるのは、想像力を掻き立てる小説なんだと信じている。だから、一人でも多くの女性に、一冊でも多くの物語を読んで、自分自身を救い励まして、誰のためでもない自分らしい人生を送ってほしいと思う。それはそのまま5冊だけの本屋の信念になっている。どうかたくさんの女性が想像力をもって自分の幸せを追求できますように。


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